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コラム

【後半】グルメ、体験、宿泊。吹屋ふるさと村を楽しみ尽くす

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【後半】グルメ、体験、宿泊。吹屋ふるさと村を楽しみ尽くす
赤い町並みが印象的な「吹屋ふるさと村」。赤く染まった景観が見られる町として、数年前からインスタグラムなどにも紹介されるこの地区は山間に広がる集落で、連なる家々の壁も屋根も赤く独特な景観を形作っています。写真映えするこの景色に魅了された人も多いかもしれません。古き良き時代を感じながら散策できる吹屋街道沿いには、飲食店やおみやげ屋さんが軒を連ね、気軽に声をかけてくれる地元の人たちの心温まるおもてなしがありました。地域の資源をより魅力的に映す「古民家一棟貸しの宿」や「ベンガラ染め体験」など、吹屋をより深く知ることができるスポットがいっぱいです。


吹屋の町並み、見て歩き
江戸時代から明治時代にかけて、日本三大銅山として繁栄していた町が、江戸時代中期からはさらにローハ、ベンガラの生産が加わり発展した吹屋地区。商家が軒を連ねていく中で吹屋の町並みが生まれ、旅館や飲食店もでき、賑わいのある町並みが形成されました。まず、ベンガラが塗られた格子と赤瓦が連なる景観には、誰もが驚かされるでしょう。ベンガラには防虫・防腐の効果があるため、この地域では建物の多くにベンガラが使用されました。当時、この町を訪れた商人や旅人たちも、きっと栄華を誇ったこの町並みに感服したにちがいありません。


道の両脇には昔ながらの建物が並び、どの町家も馬をつないだ鉄輪やベンガラ塗りの格子、なまこ壁など贅沢な造りで、ここが100年以上経過しているとは思えないほど美しく価値ある景観です。この町で暮らす方たちに話を聞いていると、町並みだけでなく歴史や文化そのものへの保存意識が高く、自分の町に誇りを持つとともに、守り伝えていく責任を果たしているようにも見え、一気にその世界観に引き込まれていきます。




かわいい看板猫たちにも会える、ほのぼのとした雰囲気も好き。いろんな切り取り方ができて、カメラを撮る手が止まりません。




また、もうひとつの特徴が“赤瓦”。吹屋の町並みの多くを手がけたのは、石見国(現・島根県石見地方)から招かれた棟梁や大工で、その際石見から伝わった渋い色合いの「石州瓦」も、景観の大きな特徴のひとつとなっています。吹屋から4キロほど先の塩田地区を中心に瓦を焼く窯があり、石見から移住した瓦職人が瓦を焼いていました。吹屋にもちょうど良い釉薬と土があり、焼き締められ雪にも割れにくい、石州瓦と同じ赤茶色の瓦がたくさん焼かれていました。


ローハやベンガラに関わった旦那衆らは、製造や価格に関する合議と同様、町家建設も話し合いによって計画的に、美観を考慮した統一感ある町づくりを行いました。こうして現在残された文化的景観、稀有な風景が生み出されることとなりました。


道路の幅の狭さや、右に左に曲がりくねった昔のままの道に歴史を感じるとともに、ランチを食べたりおみやげを購入したりと、楽しく観光もできます。最近では宿泊施設も完成し、散策だけでなく滞在も叶うスポットとなりました。現在、町家のいくつかは飲食店やカフェ、お土産屋さんとして利用されています。ベンガラの町へ来たのだから何か想い出に…、と立ち寄ったのはベンガラ染めの商品が見られる「麻田百貨店」。カラフルに染められたストールや雑貨小物が並んでいました。




食べ歩きにお団子もいただきました。香ばしく焼かれた醤油とみその2種類。店頭には椅子も用意されているので、お団子片手に休憩もできます。



ランチでおすすめしたいのは、「吹屋食堂」。観光客だけでなく、地元の人も立ち寄るアットホームなお店です。


一度は閉店したお店を、東京からの移住者、銘形一哉さんが受け継ぎ、「2代目ふるさと村休憩所吹屋食堂」として生まれ変わりました。

太打ちのそばに山菜をたっぷり入れた「けんちん田舎そば」。山菜やそばの香りが立ち、優しい出汁が体にじんわりと染み入るおいしさ。おもてなしを感じられ居心地良く、心まであったかくなれるお店でした。



お店には少しですが地域のおみやげの扱いもあり、この地域で作られている、だるまが可愛い「吹屋の紅だるま柚子胡椒」を買いました。



もう一つ、ランチのおすすめはスープカレー「つくし」。

岡山市内で修行をされ、ご自身のふるさと・吹屋でカレー店を開店したご主人のお店です。野菜たっぷりでスパイシーなカレーは辛さを選べます。
ごはんにレモンをかけ、フルーティーな酸味を加えていただきます。

ごろっと大きなチキンが入った「骨付きチキンスープカレー」、鶏の大きなカツが一枚乗った「チキンカツスープカレー」など、人気のメニューが並びます。




ここはもともとご店主のご実家で、少しでも町を盛り上げたいという気持ちを持って地元に戻ってお店を開店したのだそうです。土間や畳の座敷など、ホッとできる雰囲気が満載のお店。


吹屋のお店はどこもアットホーム。優しい笑顔で迎えてくれる、温かいおもてなしがありました。




日本の色でハンカチを染める。体験から見つける旅の楽しみ
吹屋地区では実際に、ベンガラ染めを体験することもできました。ベンガラ染めは、ハンカチからストールやTシャツといった大きなものまで。小一時間でできるハンカチをチョイスし、さっそく挑戦。


場所は「吹屋案内所下町ふらっと」。見るだけでなく吹屋の魅力を感覚で体験したい。そんな人にオススメです。


それにしても、ベンガラの色ってとてもきれい。天然色なので優しい風合いに仕上がります。


型は豊富でかわいいものがたくさんで、作るよりも選ぶ方に時間をたっぷり使ってしまう自分の優柔不断さに呆れつつも、なんとかチョイスしました。やり方はとっても簡単。布の上の描きたい場所に型を置き、色を付けた筆をステンシルのようにポンポンと叩き、色を乗せていきます。丁寧に教えてもらえ、初心者でも大丈夫です。





水を含ませぼんやりと滲ませるようにすると、淡い色がふんわりと乗ります。一枚の布に正面から向かい、ついつい真剣に。それまでとは全く別の感覚、時間を過ごせました。


誰でも簡単にできるし、その場で乾かして、すぐに持って帰れるのも魅力的。体験を通してゆっくりと地元の人と会話を楽しむことも、制作する喜びも味わえるベンガラ染め体験。ちょっと失敗した箇所もあったけれど、そこを見る度に吹屋を思い出すことができる、旅のスタンプみたいなものですね。



吹屋をもっともっと楽しみたい人にオススメ「ぼんばす」「吹屋小学校」
吹屋を楽しめるコンテンツはまだまだあります。かわいいボンネットバスに乗って町巡りをできる「ぼんばす」。予約すれば、行きたい場所まで連れて行ってもらえます。少し離れた場所にある「旧広兼邸」や「笹畝坑道」なども、事前予約(貸切)をしておけば、ぼんばすで移動することができます。

赤瓦をすぐ目の前に見ることができ、赤い世界に包まれます。



内部もレトロで非日常感たっぷり。町並みを走る姿もぴったりはまって、フォットジェニックな一枚が撮影できますよ。



平成24(2012)年まで現役の学校として使用された「旧吹屋小学校」。本館は明治42(1909)年に岡山県の技師であった江川三郎八が設計したもの。閉校時まで「国内現役最古の学校建築」として知られていました。江川三郎八は、岡山県内の多くの公共建築に関わった人で、一部は文化財として指定されています。

地元の人々に惜しまれながら閉校となりましたが、7年にわたる保存修理が行われ、令和4(2022)年4月から一般公開予定となっています。当時流行した、洋風建築に日本の大工が挑戦し和洋折衷に仕上げた「擬洋風建築」で、木造2階建ての威風堂々の姿を見ることができます。今後、日本遺産センター(仮称)やミュージアム、内部見学可能な施設として活用されることになっています。

現在では奥にあった旧吹屋中学校の跡地に宿泊施設「ラ・フォーレ吹屋」が整備され、吹屋エリアに滞在できるスポットになっています。


古民家空き家を再生させた「町家ステイ吹屋千枚」
山神社の目の前にあり、もともとは銅山の庶務をしていた人物の家であった古民家。ここがリニューアルされ、宿泊施設「町家ステイ吹屋千枚」としてオープンしたのは平成30(2018)年9月のこと。一棟貸しなので他のお客さんと会うこともなく、チェックインを済ませて鍵を渡されたら、自由に気兼ねなく過ごせ、散歩に出かけることも可能です。


国の重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)の古民家を利用した宿泊施設とあって、そこに身を置くだけでも特別感があり、吹屋の楽しみ方が広がります。整備された室内には檜の浴槽のお風呂、2つのベッドルーム、大きなダイニング、おこもり感がある和室などが揃い、7名ほどで宿泊できる広さです。



日本らしいしつらいを感じることもできますし、清潔で、季節の花々などのおもてなしを受けることもできます。外国からのお客様にもぴったりですね。



ダイニングは床暖房で、標高500mに位置する吹屋の寒さにも対応。快適なステイが楽しめます。

夕食は、近くの仕出し屋さんからデリバリーされてきます。お刺身やお鍋などが盛り込まれた、日本懐石のような充実した内容です。



この日は鱧しゃぶ。あっさりとしたお出汁で上品な味わい。


朝ごはんはお隣の「cafe燈」にて。地元の野菜を使った、ヘルシーでボリューミーな朝ごはん。

地元高梁市名産のトマトを使ったメニューや、もち麦「きらりもち」、ふわふわのだし巻き卵など、朝からうれしいメニューがふんだんです。




手作りのホット柚子ドリンクが、体にじんわり沁みます。

食後にはお部屋に用意されているコーヒーを一杯。香り高いコーヒーで、浄化されたような静かな時間を過ごせました。



吹屋の伝統的な建物の特徴を残す「町家ステイ吹屋千枚」。古い情緒とモダンが融合する宿で、歴史と文化に触れるステイが叶います。自分時間を満喫できる吹屋の旅吹屋の旅は特に視覚的、直感的に感じるものが多く、歴史に触れるとともに目から感じるいろんなモノ、コトがとても貴重で個性的。先人が残していってくれた歴史の足跡が今にも聞こえてきそうなくらい、リアルな時間旅行が楽しめました。



穏やかな時間と山に囲まれた自然豊かな場所で、日常のストレスを忘れてのんびりと時間を過ごせました。この町を訪れた人たちは優しい時間に癒され、“日本の赤”に魅了され、記憶のアルバムに吹屋の町を刻むに違いありません。そしてこの吹屋の町並みを通して先人たちからもらった歴史のバトンを、また次の世代へと渡していくのでしょう。これからも古きは守り、少しずつ新しいものを加えながら、これからも多くの人たちに愛される歴史的スポットになっていってほしいと思います。
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